RDD2021(Rare Disease Day)

世界希少・難治性疾患の日特集【第1回】

2021-02-19

世界に3億人の患者 95%が治療薬なし 希少疾患について考えよう

世界には、希少疾患を抱える患者が3億人ほどおり、それらの病気の95%には治療薬がないといわれています。希少疾患については情報が少ないため、世間一般だけでなく医師の中にも知識が不足している人が多くいます。それゆえに、平均すると診断までには5~7年かかり、さらに40%の患者が誤診を受けた経験があるそうです。早い段階で正しい診断が受けられれば、症状を和らげたり進行を遅らせたりできるケースも少なくありません。

そこで、多くの人に希少疾患や難病への理解を深めてもらい、患者の生活の質を向上させることを目指して、2008年にスウェーデンで、2月の最終日を「世界希少・難治性疾患の日(Rare Disease Day、以下RDD)」とすることが定められました。
それ以降、各国でRDDに関連した取り組みが行われ、現在100カ国ほどでさまざまな活動が実施されています。日本では10年から毎年、RDD日本開催事務局(東京)を中心に全国各地の団体が啓発活動を行っています。

「ヒポクラ×マイナビ」はRDDに向け、RDD月間の2月中に全国各地で開催されるイベントや、希少疾患と難病を取り巻く状況について、数回に分けて特集記事を配信していきます。

希少・難治性疾患を考えるきっかけに 東京駅地下ギャラリーでパネル展開催

希少疾患や難病について解説し、患者や家族が撮影した写真などを紹介するパネル展が、東京駅行幸地下ギャラリーで開かれています。写真コーナーには、患者の力強い笑顔を写したものや、家族や友人との一コマ、自然風景をとらえた作品など約40点の力作が展示されています。28日までで、入場無料です。
(ヒポクラ × マイナビ編集部・金子省吾、峰尾竜徳)

パネル展はRDD日本開催事務局が毎年企画しています。東京駅行幸地下ギャラリーを会場にするのは今回が初めてで、これまでで最大規模です。地下ギャラリーはJR東京駅に直結していて、丸ビルと新丸ビルをつなぐ位置にあります。全長約220mの通路の左右のガラスケース内に、A0判のパネル約50枚が並んでいます。
開催事務局の西村由希子事務局長は「希少・難治性疾患に関わるさまざまな分野のパネルを散りばめて展示しています。何かしら興味を持つテーマがあると思うので、それをきっかけとして、希少・難治性疾患について考える機会にしてほしい」と呼びかけています。

写真展「拝啓、わたしは元気です」 生きる喜びを表現した作品など40点

数あるパネルの中でも、通行人の目を引いていたのは、患者や家族から寄せられた写真です。RDDを盛り上げようと2019年から写真コンテストが行われていて、今年は「拝啓、わたしは元気です」をテーマに、全国各地から約40点が集まりました。西村事務局長は「新型コロナの流行下で、会いたい人に会えない状況です。だからこそ、患者さんの『今も元気です』という姿を届けたいという思いから手紙をイメージしてテーマを決めました」と語っています。

患者自身が被写体になった作品は、生きる喜びを表現したものが多くみられました。

運動神経が徐々に減少し、筋肉の萎縮や筋力低下などが起こるウエルドニッヒ・ホフマン症の女性は、介助者の女性に抱きかかえられながら、砂浜の波打ち際を散歩している写真を出品しました。新型コロナの流行で外出を控えていたそうですが、「新型コロナに感染しなくても、元々の病気の進行で命を落とすかもしれない。それならば……」と他県に住む友人に会いに行き、その際に砂浜を訪れたといいます。

喉元の円形の物体を指さしながら満面の笑みを浮かべている写真の女性は、代謝性ミオパチー、エーラス・ダンロス症候群疑いと診断されているそうです。代謝性ミオパチーは筋力の低下や筋肉の痛みなどが起こり、エーラス・ダンロス症候群は皮膚や関節や各組織がもろくなる病気です。気管切開の手術を受けたというので、円形の物体は気管に通しているチューブのキャップでしょうか。

車いすに乗った男性のいる家族連れを、1頭のキリンが柵の上からジッと見つめる姿をとらえた写真。男性は、全身の筋肉が徐々に動かなくなるALS(筋萎縮性側索硬化症)を患っています。孫に会うために長距離を船で旅行し、動物園を訪れた時に撮影した1枚だそうです。

他にも、家族や友人、風景などを患者が撮影した作品も多数展示されています。

足を止め、患者本人を撮影した数枚の写真に見入っていた女性(84)に話を聞くと、「これみんな病気の人の写真なの? 元気に写っているし、何より笑顔がすてきな写真ばかりね」とほほ笑んでいました。自身を含め、周囲には健康な人が多いといい「こういう病気(希少疾患や難病)について知る機会は今までなかった。治療が難しい病気がたくさんあって、それに向き合っている患者さんや家族がいることが分かりました」と、ゆっくりとうなずいていました。

<RDD日本2021 パネル展>
日時:2021年2月1~28日(6時~24時30分)
場所:東京駅行幸地下ギャラリー
問い合わせ:RDD日本開催事務局